ゴールドマンは、当時のアメリカ財務長官ヘンリー・ポールソンの出身企業でもありました(ポールソンは元ゴールドマン・サックスCEO)。
そしてポールソン長官のもと、救済されたAIGはゴールドマン・サックスに対しては1ドルも値引きすることなくCDSの“全額支払い”を行ったのです。
しかもゴールドマン・サックスは、2006年ごろから、サブプライム市場の危険性を認識し始め、「MBS市場の崩壊」に賭けるCDSの買いポジションを拡大していたことが複数の証言や調査報告から明らかになっています。
つまり“崩壊に賭ける”という投機的な行動を取りながら、そのヤバい商品を他人に売り続けるという行為を続けていたのです。
このような事実が明らかになってきたことで、「財務長官が古巣のゴールドマン・サックスを特別扱いしたのでは?」という批判が巻き起こり、ウォール街とワシントンの癒着構造が一気に問題視されるようになりました。
この一連の流れは、単に経済の仕組みや金融商品の技術的な失敗ではありません。
そこにあったのは、「自分だけ儲かればいい」「売れれば勝ち」という、モラルなき営業や投資行動の連鎖です。
数字だけを追い、損失を他人に押し付け、危うい商品を平気で売る。市場に蔓延していた、関係者たちのモラルの低さを露呈する事件だったのです。
バブルはリーマンだけじゃない:日本のバブル経済とITバブルの教訓
ここまでリーマン・ショックを通じて、現代の金融がいかに信用と欲望の上に成り立ち、それが一瞬にして崩れ得るものであるかを見てきました。
しかし、バブルという現象は決してひとつの時代、ひとつの国だけに限定されたものではありません。むしろ、形を変えながら何度も何度も歴史の中で繰り返されてきた「人間の欲望のかたち」とも言えます。
たとえば、1980年代後半の日本は、まさに“バブル景気”の最中にありました。
株も土地も毎年のように値上がりを続け、「地価は下がらない」「東京の土地を全部売ればアメリカが買える」とまで言われた時代です。
