米国社会では過剰摂取による死亡者数は2000年には1万7000人強だったが、2023年には11万人を超えた。「米国では毎年40,000人を超える交通事故死者が出ているが、薬物関連の死亡者数は毎年ほぼ3倍になっている。主な原因は合成オピオイドだ。鎮痛剤のフェンタニルがそのうち約80%を占めている」という。
トランプ政権の政府関係者は「フェンタニルだけでも、毎年、かつてないほど多くのアメリカ人が亡くなっている。これは、スーパーボウルでスーパードームに座っている人の数とほぼ同じだ。これはベトナム戦争で亡くなった兵士の数よりも多い。そして、これは毎年繰り返されている」と説明している。このように比較されると、米国社会での薬物・麻薬汚染の現状がいかに危機的か理解できる。中途半端な数ではないのだ。
米国麻薬取締局(DEA)によると、中国は「米国に密輸されるフェンタニル関連化学物質((麻薬用前駆物質)の主な供給源」という。これらは通常、小包配送で米国に送られる。フェンタニルの密輸業者は特定の関税法、つまり、デミニミス規則を悪用してきた。同規則では800ドル以下の小包の出荷は通関手続きの対象にならない。SheinやTemuのような中国の格安オンラインストア大手はこの関税の抜け穴を利用してきた。ロイター通信によると、テムだけでも昨年、米国に約300億ドル相当の荷物を送った。ちなみに、海外からの全配送の90パーセントがデミ二ミス規則に該当する。慢性的に過負荷状態にある税関当局は荷物が多すぎて配送品のほんの一部しか検査することができない。麻薬カルテルにとって好条件というわけだ(シュルテ記者)。
それに対し、トランプ大統領はこの規制を解除した。これは、商品の価値に関わらず、中国からの輸入品は関税の対象とすることを決めたのだ。米国はデミニミスルールを廃止することでフェンタニルの氾濫を抑制し、他方で中国との貿易赤字を削減するという目的だ。