そんな中、アメリカのシアトルに拠点を持つWhooshh Innovations社が提案したのが「Whooshh Fish Transport System」と呼ばれる装置です。
メディアなどでは、「鮭大砲(Salmon cannon)」という名で話題を呼んでいます。
名前だけを見るとかなり物騒ですが、一体どんな装置なのでしょうか?
チューブを使ってサケを上流へ運ぶ「鮭大砲」の仕組み
「鮭大砲」という物騒な呼び名の装置は、サケなどの「遡上する魚」を上流へ安全に運ぶことを目的にしています。
ダムなどで故郷の川に帰れないサケたちを、「鮭大砲」を使って上流へと”ぶっ飛ばす”わけです。
とはいえ、実際に大砲を使うわけでも、空中に放り投げるわけでもありません。

鮭大砲は、直径約30~35cmの柔らかいシリコン製チューブと、低圧の空気流による搬送システムで構成されています。
ダムなどで遮断された下流と上流を繋ぐバイパスとして機能するわけです。
この装置にサケが入ると、空気と少量の水によってチューブ内を秒速5~10mのスピードで滑らかに運ばれ、通常は数十秒で上流に到達します。
チューブの内部の空気圧は低いため、サケを優しく運ぶことができます。
また内部のミスト噴射が潤滑油のような役割を果たし、魚体へのダメージを最小限に抑えています。
従来のシステムでは、人間の手で魚をチューブに入れる必要があり、時間と労力がかかるだけでなく、魚にもストレスを与えていました。
しかし、改良された「鮭大砲」では、下流に設置された入口から水が絶えず流れ出るようになっています。
この流れが遡上しようとする魚の本能をくすぐり、自然に入口へと引き寄せます。
人間が魚をチューブに入れる必要はなく、魚たちが自らチューブへと入っていくのです。
