特に注目されたのは、モスラ・フェントニの体の後端にある多節の構造です。

最大で26の体節を持ち、これは過去に発見されたラディオドンタ類の中で最多だという。

研究者いわく、これはカブトガニやダンゴムシなどの現生の節足動物と似ており、体の後方にも呼吸器官を備えていたことを示すといいます。

チームはこの特徴がなぜ進化したのかは不明としていますが、モスラ・フェントニが特定の生息環境や行動特性に適応し、より効率的な呼吸を必要とした可能性があると述べています。

体の内側までクッキリ保存されていた!

画像
化石の画像/ Credit: Joseph Moysiuk and Jean-Bernard Caron., Royal Society Open Science(2025)

またモスラ・フェントニの化石は、他の化石ではめったに見られない内部構造の詳細まで保存されていました。

チームは化石から神経系や消化管、循環器系の痕跡を発見しました。 特に循環器系では「ラキュナ(lacunae)」と呼ばれる大きな内部空洞が明瞭に確認されました。

モスラ・フェントニは私たちのような動脈や静脈を持たず、今日の昆虫と同じく、心臓がラキュナに血液を送り込む「開放血管系」を持っていたようです。

ヒトを含む脊椎動物の血管系は、心臓から送り出された血液が動脈を通って、静脈に入り、そこから心臓に送り戻されます。

このように血液が決められた動脈と静脈、そしてそれらをつなぐ毛細血管の中を通るシステムを「閉鎖血管系」と呼びます。

対して、昆虫は動脈と静脈をつなぐ毛細血管がありません。

動脈から出た血液はそのまま開放されて、 直接的に体内の組織間を流れて静脈へと戻っていきます。

これを「開放血管系」と呼びます。

モスラ・フェントニのラキュナは体内からひれの先端にまで広がり、泳ぎながら効率よく酸素を取り込める仕組みだったと考えられています。

画像
体の各構造の復元図/ Credit: Joseph Moysiuk and Jean-Bernard Caron., Royal Society Open Science(2025)