私が感じているのは、欧州諸国指導者の世論対策の姿勢だ。ロシアの方は仰々しく派手な大パレードと多国間外交交渉を示したうえで、祖先への感謝といった共同体的価値観を強調するプーチン大統領の姿を強調するシーンで宣伝活動をしている。これに対して欧州諸国は、数名の仲間内の旅行のような雰囲気で、リラックスした服装、リラックスした表情、サークル的な協議風景を前面に出して、宣伝活動をしている。
儀式ばったモスクワの大祖国戦争式典に反発するつもりだったのか、欧州人が欧州人だけで内輪のノリでウクライナでも仲の良いインナーサークル振る舞いするのをメディアにアピールする作戦に、私は首をかしげるポストをしていたが、今日はSNSがコカイン騒動一色だな。 Ef5SNFp
— 篠田英朗 Hideaki SHINODA (@ShinodaHideaki) May 11, 2025
ロシアの儀式主義を悪い権威主義だ、と印象付けるために、わざと庶民的な友情の光景をアピールするようなつもりなのかもしれない。だがこれは、一歩間違えると、欧州数カ国の仲間内のインナーサークルの集まりの軽いノリで、数十万人とも言われる犠牲者数が出ている戦争の継続支持をしている、といった印象を、欧州域外の70億人以上の世界の人々に与えてしまうリスクがある。
西欧諸国のエリート層と付き合っている限り、悪いのはプーチンで、要するにそれだけのことだ、という雰囲気が強い。しかしそのノリで、ロシアを追加制裁で潰す、追加の特別法廷でプーチンを罰する、云々といった強い政策を、ただ欧州の間だけで発言し続けていると、どうしても西欧の外にいる人たちは引いてしまう。気づけば、あらゆる政策が、一部の西欧諸国だけで語っているだけの光景が広がっていってしまう。
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