なお、アメリカのトランプ政権関係者は、追加制裁に同調する、と発言していない。加えて、EUでの全加盟国の同意が必要な追加制裁について、実現可能性を疑う見方もある。ハンガリーやスロバキアが、EUの反ロシア政策に疑念を表明するようになっており、追加制裁に同意するか、不明だからだ。EU指導部は、通常の制裁決定の手続きを回避する手段をとるのではないか、という憶測も流れている。もともとイギリスはEU加盟国ではない。今回は、EUと同調して制裁する、という意思表明を首相が行った、ということだろう。イギリスとともに、有志のEU加盟国が制裁措置をとることはできる。だがそうなると、さらにいっそう賛同国が減り、制裁参加国が減る恐れがある。果たしてそのようなわずかな数の小国だけが行うものが、「制裁」の名称に見合うものなのか、疑念も出てくるだろう。単なる断交に近いものかもしれない。

恐らくは、そのあたりの事情も見越しているのだろう。ロシアは制裁の「威嚇」に全く反応せず、無視している。追加制裁とは、ロシアと貿易をした第三国に500%の関税をかける措置だ、と噂されている。この追加制裁なるものは、「トランプ関税」の拡張版のようなもので、実効性があるのか、疑わしい。欧州人にしてみると「トランプさん、あなた、自国の勝手な都合で中国に145%の関税かけると言ったんだから、ウクライナのために中国に500%の関税をかけるくらい何でもないだろう」といった話なのだが、率直に言って、「トランプ関税」の交渉を中国やインドを含めた相当数の諸国と始めているトランプ政権にしてみると、迷惑な話であると思われる。

SNSなどでは、「いいぞ、欧州、ロシアをつぶせ!」や、「プーチン、早くトルコに来い!怖いのか!」などの威勢の良い声が見られる。各国指導者の発言や行動は、お茶の間あるいはスマホ前のファン層へのサービスのアピールとしては成功しているようだ。だが停戦交渉の進展には、つながっていない。