ロシア・ウクライナ戦争は、大規模で凄惨な戦争である。大規模侵攻開始時から3年以上、ドンバス戦争勃発時からは11年以上の長期にわたって続いている。背景となる歴史も深く、当事国の国民感情も重たく複雑なところがある。紛争に関わる「準」当事者のような有力アクターの数も多い。評論家や学者層の情緒的関与の度合いも高く、感情的憎悪関係なども蓄積されてきている。複雑方程式を解くのに、時間がかかるのはやむを得ないところはある。まだ前途は多難である。

ただそれでもトランプ大統領就任後の変化は、大きい。「ウクライナは勝たなければいけない」と主張しなければ非難されてしまう雰囲気は、霧消した。「この戦争は終わらない」の主張も、あまり聞かなくなった。動いてはいる、ということだろう。今回は、トルコのエルドアン大統領が、調停を取り仕切るために待っている。黒海の玄関口を握り、かつて「穀物交渉」を成立させた実績を持つ。今年の2月24日に、国連安全保障理事会で2022年以降初めてのロシア・ウクライナ戦争に関する決議が採択されたが、それは「可能な限り速やかな停戦を要請する」という内容だ。そろって棄権した英・仏など欧州の理事国以外の全ての理事国の賛成票が集まった。安保理決議は、国連憲章に基づいて、全加盟国を拘束する。

フランス・ドイツ・イギリスの首脳たちが電車でキーウに向かう際、突然の撮影に見舞われた場面で、マクロン大統領が何らかの白い紙を、メルツ首相が非常に小さいスプーン上の何ものかを、あわてて隠す、という動作があった。これについて、最初は「あの二人、何を慌てて隠しているのだろう」という指摘だったものが、やがて「コカインをやっていたのではないか」という話が広まり始めた。当然、フランス政府などは打消しの声明を出した。しかしロシアの報道官がコカイン解釈を紹介するところまでに至ったため、今度は「親露派バスターズ」界隈の一斉に反応した。「ほんの少しでもこのシーンに関係したことを言ったら、即座に親露派とみなして糾弾の対象とする」といわんばかりの「犬笛」を吹いて、SNS界隈でお馴染みとなった「隠れ親露派狩り」の嵐も吹き荒れることになった。

フランス・ドイツ・イギリスの首脳ら