とりわけ、「安倍一強」と言われ特定の政治家に権力が集中し、官僚の世界を歪めていた時代であれば、行政行為が政治家から有形無形の影響を受けていた可能性があり、正確な記録保存の必要性は一層大きかった。
かかる意味において、森友学園に対する国有地売却に関する政治家の動きについての公文書を、問題表面化後ただちに丸ごと廃棄したという、今回明らかになった財務省の罪はあまりに重く、そのような行為に対して全く刑事罰を適用することができなかった当時の検察の対応にも重大な疑問がある。
このような公文書の廃棄が行われず、すべて国会に提出され、交渉の経過、政治家の介在の事実が客観的に明らかにされていたら、国会審議の紛糾・混乱が生じることも、それらをおそれた財務省内での決裁文書の改ざんが行われることもなかった。
そして、公務員としての使命に忠実だった赤木俊夫さんが、自ら命を絶つこともなかった。
このようなことは二度と繰り返してはならない。そのためにも、当時の佐川理財局長の証人喚問は不可欠であり、当時の山本特捜部長、北川検事正の証人尋問も検討すべきだ。
「大きな政府」を掲げる英国の労働党政権が、疑問符が付くような政策を次々と発表しています。
3月18日、リズ・ケンダル労働年金相は社会福祉制度の大規模な改革案を発表し、2030年までに50億ポンド( 約9719億円)を削減すると述べました。病気を持つ人や障がい者向け給付金の一つ「個人自立手当」(Personal Independence Payment=PIP)の支給要件を厳格化するなどの変更をするそうです。
筆者はこの改革案にどきりとしました。要件の厳格化によって、社会的に弱い立場にいる人を窮地に追い込む可能性があるように思えたからです。

キア・ロドニー・スターマー首相インスタグラムより
PIP受給者はこの10年で2倍に
年金相によると、労働人口の10人に1人が疾病あるいは障がい者向け給付金を受け取っており、PIP受給者はこの10年で2倍の430万人に達しました。
5年前の新型コロナの発生以降、PIPを含む病人・障がい者向け給付金の総額は200億ポンド(約3兆8000億円)まで増えており、現行のままだと30年までに700億ポンド(約13兆7000億円)に膨れ上がるそうです。
「働くことを奨励する」体制を作りたいと年金相は述べていますが、「福祉予算を減らすこと」が一人ひとりの受給者の実情よりも優先されているように聞こえます。
PIPは現在、イングランド、ウェールズ、北アイルランドに住む360万人に支給されています。PIPには日々の生活に関連する手当と身体の可動性にかかわる手当があり、来年11月から前者の査定が厳格化される予定となっています。これによって80万人に影響が出るそうです。
就労可能な年齢にある低所得者を対象とする手当「ユニバーサル・クレジット」は750万人に支給されていますが、長期の疾病あるいは障がいを持つ場合、毎月の給付金に上乗せ金が追加され、ほぼ倍増します。
政府の予算案では、上乗せ金を受け取るには一定の年齢に達している必要がありますが、金額自体が約半分にされ、29年度からは凍結されるということです。