政府の福祉予算削減でどれほどの影響が出るのでしょう?
3月26日、レイチェル・リーヴス財務相による緊急歳出削減策が発表されましたが、同日に公表された労働年金省の試算では、約320万世帯が負の影響を受け、年間1720ポンド(約33万7800円)を失うことになるそうです。
この中で、現在PIPの受給対象者となっている37万人が対象外となり、将来的にPIPを受給する43万人が現行の受給者よりも年間4500ポンド(約87万3000円)少ない金額を受け取ることになります。
また、ユニバーサル・クレジットを受け取る人の中で250万人が、上乗せ分の金額凍結によって年間500ポンド(約9万6000円)分の受給が減ります。
政府は障がいおよび長期疾病を持つ人が雇用を得るための支援金として10億ポンド(約1941億円)の追加資金を拠出予定で、これが受給権利を失った人の助けになると良いのですが。
5万人の子どもたちが「相対的貧困」に
同省の調べによると、一連の福祉改革によって5万人の子どもを含む25万人が「相対的貧困」になるそうです。英国では世帯収入が世帯収入分布の中央値の60パーセント以下となる状況を「相対的貧困」としています。
財政の健全化を目指ざす政府の意図は理解できますが、昨年7月の発足以来、労働党政権が繰り出す政策が国民に不安の種をまいています。
まず年金生活世帯への光熱費支援の停止、それに農地資産の相続税全額控除の変更、そして今回の福祉予算削減は、税金を使って高水準の公的サービスを実現する「大きな政府」であったはずの労働党政権のイメージと逆行しているようです。
また、政府は官僚機構の15パーセント縮小の上にNHSイングランドを廃止し、政府内で管理する予定です。NHSイングランドの職員と保健省職員は半数近くが仕事を失うことになるそうです。
低成長が続くなか、PIPなどの手当を失った人、人員整理の対象となった人はどこに居場所を見つけ、生活を安定させるのか。気になります。