さらに先端的な精密機器や科学実験の世界に行くと、小数点以下10桁以上の精度を要求されることもしばしばあります。

こうした現場の“必要精度”は、実際に機械や実験がどの程度の誤差を許容できるかによって変動しますが、少なくとも「少数の数桁をきちんと合わせる」ことはほとんどの実用分野で不可欠といえます。

このような数桁から10桁クラスの精度なら、今回紹介した“無限級数を使った解法”でも、足す項数を少し増やすだけで十分に得られる可能性があります。

さらにこの過程からは、これまで知られていなかった「ジオード(Geode)」という新しい配列も見つかりました。

多角形を区切った面を数えるように項を積み上げていくと、大きな級数が不思議な形で“因数分解”されるのですが、その因数分解先が「ジオード配列」という、カタラン数をさらに下支えするような構造になっていたのです。

ワイルドバーガー教授は「ジオード配列はまったく新しい発見で、カタラン数を一段と拡張したようなものだ」と話し、これから数多くの新たな課題が生まれるだろうと期待を寄せています。

実際、ワイルドバーガーは今回の級数解法を使って式を十分な項まで計算(切り上げ)し、既知の例で正しい数値解が得られることを確かめています

例えば、17世紀の数学者ジョン・ウォリスが示した有名な3次方程式でこの方法を試したところ、解が見事に導けたと報告されています。

研究者たちは「5次方程式(クインティック)ですら解が得られる」とも述べており、これまで「不可能」と見なされてきた領域にも新たな光が差し込んでいることがうかがえます。

ルートに頼らない代数学――計算機アルゴリズムはどう変わる?

ルートに頼らない代数学――計算機アルゴリズムはどう変わる?
ルートに頼らない代数学――計算機アルゴリズムはどう変わる? / Credit:Canva

今回の研究成果が意味するところは、「高次方程式を一貫した手法で解く方法が見つかった」というだけではありません。