このヒューブライン社が打ち出したマーケティング戦略は実に見事。今回は、この戦略を深掘りします。

マーケティング基本戦略

マーケティングの基本は、STP(セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング)をキッチリと考えることです。ヒューブライン社は、STPを次のように考えました。

①セグメンテーション:まず市場を次の3つに分けました。

【高価格帯】 【中価格帯】 【低価格帯】

②ターゲッティング:各市場のターゲット顧客と、各ターゲット顧客を攻めるブランドを設定しました。

【高価格帯】 品質/ステータス重視の消費者(たとえば高級バーでカクテルを楽しむ都市部の富裕層)→老舗ブランド『スミノフ』で攻める。そのためにプレミアムイメージを強化

【中価格帯】 品質と価格のバランスを求める消費者(中間層)→ウォルフシュミットと競合する価格帯で、新ブランド『レルスカ』を投入する

【低価格帯】 価格重視の消費者(例:安いお酒を求める低所得層)→ウォルフシュミットよりも安価に設定し、コストリーダーシップを追求した新ブランド『ポポフ』を投入する

③ポジショニング:さらに各ブランドのポジショニングを明確に決めました

【プレミアムの『スミノフ』】 既によく知られたブランドでしたが、値上げすることでプレミアム性を強化し、品質・伝統・洗練されたイメージを強調。価格競争からは距離を置く

【バランスの『レルスカ』】 「手頃な品質」を訴求して、ウォルフシュミットと同等以上の価値を提供する

【価格重視の『ポポフ』】 「最も安価な選択肢」を訴求して、ウォルフシュミットよりも1ドル安い価格で価格競争を仕掛けて、市場を奪う

以上を図にまとめるとこうなります。

ライバルの包囲網を築き上げて、返り討ち

こうしてヒューブライン社は複数ブランド展開によって、高価格帯(スミノフ)、中価格帯(レルスカ)、低価格帯(ポポフ)という複数セグメントをカバー。明確なポジショニングにより自社ブランド間の「カニバリゼーション」(共食い)のリスクを抑えつつ、価格重視の『ポポフ』投入でシェアを奪うべく逆に価格攻撃も仕掛けるなど、『ウォルフシュミット』への包囲網を築き上げ、ライバルを返り討ちにしたのです。