その結果、Tomb Iに埋葬されていたのは推定25~35歳の男性で、死亡時期は紀元前388~356年と判明したのです。
ピリッポス2世は紀元前336年に46歳で暗殺されているため、Tomb Iの男性とは一致しません。
加えて、この男性と同年代の紀元前388年から紀元前356年の間に生きていたと見られる女性の遺骨も一緒に埋葬されていたことが判明しています。
一体彼らは何者なのでしょうか?
埋葬されていた「男女の正体」とは?
チームの発見は多くの疑問を残しています。なかでも研究者たちは「この墓に埋葬されていた男性と女性は誰なのか?」という疑問を抱きました。
そのため、チームは骨と歯の遺物に対してストロンチウムと安定炭素の同位体分析を実施しました。
この分析により、その人物が子どもの頃にどの地域で暮らし、どのような食生活を送っていたのかがわかります。
同位体分析の結果、この男性はマケドニア王国の首都ペラ(ヴェルギナの北東約32キロメートル)の外で幼少期を過ごしていた可能性が高いことが示されました。
一方、解剖学的分析によると18歳から25歳で亡くなったと推定される女性は、ペラまたはその周辺で子ども時代を過ごしていたと考えられます。
2人の具体的な身元はわかっていませんが、この墓の豪華さから上流階級の人物だったと考えられます。
「我々はこの男性がフィリッポス2世の暗殺より数十年前に統治し死亡したマケドニア王であった可能性があると推測しています」と研究主任の一人であるヤニス・マニアティス氏は述べました。
どの王だったのかは特定できていませんが、候補としてアレクサンドロス2世(紀元前370~368年頃在位)やペルディッカス3世(紀元前365~359年在位)が挙げられるとチームは報告しています。
彼らは2人とも、ピリッポス2世の兄として知られます。
どちらの王もマケドニア王国内部の戦争や内紛に苦しんだ波乱の治世でした。
