実際、パグやペルシャといった犬猫の代表的な愛玩品種では、こうした幼児的な顔つきが極端なまでに強調されています。

これらは専門的には「短頭種」と呼ばれ、頭が前後に短く鼻面が平らな骨格形態を示します。

いわゆる平たい「ぶちゃむくれ」顔は人間には愛嬌があって可愛らしく映るため、ペット愛好家の人気を集めてきました。

そこでワシントン大学セントルイス校とコーネル大学の研究チームは、犬と猫の頭骨形状の分布(形態空間)を同じ土俵に載せて比較する大規模な研究を行いました。

“ぶちゃむくれ収れん”進化の衝撃

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Credit:Canva

研究チームは、国内外の動物病院で撮影されたペットのCTスキャン画像や博物館の骨格標本などから、犬と猫およびそれらの野生の近縁種を含む計1810体の頭骨データを収集しました。

頭骨における形状の指標となる47箇所のランドマーク点を設定し、各頭骨の三次元座標を用いて形態を定量的に比較しました。

この包括的な解析によって、犬と猫の家畜化による形態進化の全貌が浮かび上がりました。

まず、犬と猫それぞれの頭骨形状の多様性がいかに飛び抜けて大きいかが改めて確認されました。

イエイヌでは、一種内部の形状バリエーションが野生のイヌ科全体(オオカミやコヨーテ、キツネなど)で見られる差異を上回るほど極端だったのです。

イエネコでも、一種内部の形態多様性が野生のネコ科(ライオンやトラなど)全体よりも大きいことが示されました。

言い換えれば、人間は人工選択によって、短期間でイエイヌやイエネコの形態的幅を野生の近縁種を超えるほど拡大させてしまったのです。

しかし本研究でもっとも注目すべき発見は、犬と猫という別種の間で頭骨形状が「収束」していたことでした。

研究チームが両者の形態空間を重ね合わせて比較したところ、短頭の猫品種と犬品種が同じ領域に重なって存在することが分かりました。

筆頭著者のアビー・ドレイク氏(コーネル大学)は「猫の形態空間が犬のそれに重なっているのを見たとき、『一体何が起こっているの』と目を疑いました」と驚きを語っています。