一見まったく異なる動物に思えるペルシャ猫とパグ犬ですが、並べてみるとその顔立ちは驚くほど似ています。
アメリカのワシントン大学セントルイス校(WashU)とコーネル大学(Cornell University)などの研究チームによって、進化的に約5000万年も隔たっているはずのペルシャ猫とパグ犬が、数百年という人工的な品種改良の歴史の中であっという間にそっくりな短頭形態(いわゆる、ぶちゃくむれ顔)へと収れん進化したことが明らかになりました。
人間の「かわいい」という好みがもたらしたこの現象は、いったい私たちに何を示しているのでしょうか。
研究内容の詳細は2025年4月28日に『PNAS』にて発表されました。
目次
- 可愛すぎる進化の背景
- “ぶちゃむくれ収れん”進化の衝撃
- かわいい進化の代償
可愛すぎる進化の背景

ネコ(ネコ科)とイヌ(イヌ科)は、進化の系統樹で約5000万年前に分岐した遠い親戚同士です。
野生のネコ科動物(ヤマネコなど)はイヌ科ほど鼻面が長くはなく、頭骨の形状も比較的コンパクトですが、野生のイヌ科動物(オオカミなど)は長い鼻面を持ち、両者の顔立ちは大きく異なっています。
ところが人類は古来、犬や猫を好みの姿に品種改良して多様な品種を生み出してきました。
人工選択によってペットの形態は著しく変化し、イエイヌ1種における頭骨の形状バリエーションは野生のイヌ科全体(オオカミ、コヨーテ、キツネなど)で見られる種間差を上回ることが明らかになっています。
イエネコ1種でも、頭骨形状の多様性が野生ネコ科(現生41種)の全体差より大きいことが確認されています。
舌を出した狆(チン)は、極端に平たい顔を持つ愛玩犬の一例で、人間の選択圧が生み出した「かわいい」容姿です。
人間はペットに「赤ちゃんのような」丸い顔立ちや大きな瞳、そして低く潰れた鼻といった幼児的な特徴を特に好む傾向があります。