光の性質が無限に多様だなんて、にわかには信じがたいと思われるかもしれません。
しかし実際のところ、まだ「連続スピン粒子」を完全に否定する決定的な実験結果はなく、むしろごくわずかに可能性が残っていると考えられています。
特に、水素原子ひとつを使った実験は、最もシンプルな系でそのわずかな可能性を確かめる、究極のやり方と言えるでしょう。
最近の実験技術では、一つひとつの水素原子を磁場やレーザーでつかまえて、長い寿命を持つエネルギー状態(いわゆる2s状態)にし、その崩壊を高精度で調べることが可能になりつつあります。
今回の理論研究では「通常なら起こらないはずの一つの光による崩壊が、連続スピン粒子を仮定すると起こり得る」という大胆な予想を打ち出しました。
次に必要なのは、この予想を実際の実験で検証し、本当に連続スピン粒子らしき兆候が見つかるかどうかを確かめることです。
もしそんな兆候が確認されれば、電磁気力を担う光が「右回りや左回りだけしかない」と思われてきた常識を覆し、素粒子物理そのものの大転換につながるかもしれません。
研究者の一人であるトロ博士は「もし新しい理論が既知の物理と矛盾なく広く成り立つなら、我々が理解していると思っていた力が、実は連続スピン粒子によって媒介されているという刺激的な可能性が出てきます」と話し、そのインパクトを強調しています。
実は光子だけでなく、重力を運ぶとされる仮説上の粒子(グラビトン)なども、同じように連続スピン粒子であるかもしれないと指摘されており、これが事実になれば標準模型を超える大きな枠組みの物理が開けてくるのです。
一方で、連続スピン粒子の兆候が全く見つからない場合にも、意味がないわけではありません。
その場合は“連続スピン粒子のはたらき”を示す値(たとえば回転の幅を示すもの)がさらに小さくなければならないことになり、存在の可能性はますます狭まるからです。