しかし1939年に物理学者のユージン・ウィグナーが示唆したのは、光子が「連続スピン粒子(英語ではContinuous Spin Particle)」と呼ばれる不思議な存在かもしれない、という可能性でした。
もし本当に連続スピン粒子なら、光子は右回りと左回りだけではなく、限りなく多様な回転パターンを持つことになり、私たちの常識を大きく覆すかもしれません。
とはいえ、こんなに無限の回転モードを持つ光子がいると、計算が破綻したり、太陽のような星が異常に冷えてしまうなど、多くの矛盾が起こると長らく考えられてきました。
そのため多くの研究者は「連続スピン粒子は理論上考えられても、現実にはあり得ない」と半ば決めつけてきたのです。
ところが近年になって、スタンフォード大学SLAC国立加速器研究所のフィリップ・シュースター博士とナタリア・トロ博士らが、基本的な物理の原理(ローレンツ対称性など)を出発点にモデルを作り上げたところ、連続スピン粒子が存在しても破綻が起きない場合があるとわかってきました。
かつては不可能だと考えられていた粒子の存在が、量子論の進歩によって「ちゃんと動く理論」として進化したのです。
しかもそのモデルでは、普通の光子とほとんど見分けがつかないような動きを示す一方で、ほんの少しだけ違いが混ざる可能性もあるのです。
理論が発展してくれば、流れは必然的に実験的実証に移動します。
実際近年では「自然のどこかにこの連続スピン粒子が隠れていてもおかしくないのではないか?それなら実際に実験で確かめよう」と熱が高まってきました。
ただこれまでは、連続スピン光子が標準的な光子と決定的に区別できる方法がなく、検証の糸口すらつかめない状態が続いていました。
そこで今回の研究チームは、「めったに起こらない原子の変化」に着目し、区別するための方法を開発することにしました。
そこで注目されたのが、「わずか一つの水素原子」が特別な光を出す現象でした。
光は“右か左”だけじゃない? 無限状態が教科書を燃やす日
