但し、日本がギブアンドテイクの部分でどれだけの提案ができるか、ここが良く見えません。例えばアラスカのLNGをパイプラインで持ってくるという案があります。一般ニュースではさらっとしか触れていないのであまり知られていないと思いますが、アラスカのガス田は北極海側のノーススローブというところにあります。そのガスを日本に持ってくるにはまず、アラスカの北極海側から太平洋側に縦断するパイプラインを敷設する必要があります。それがほぼ無理難題で、丸紅が90年代に検討したこともありますが、実現していません。理由は地上の距離だけで1300㌔、アラスカは山岳地帯で且つ厳しい気象条件です。更に言うなら先住民との交渉がたやすくないでしょう。私からすれば事実上実質不可能な案件なのです。
カナダ ブリティッシュコロンビア州で今年からLNGのアジア向け輸出が始まりますが、この敷設でカナダ政府がどれだけ苦労しどれだけ年月をかけたかを考えるとアラスカの話は絵に描いた餅でしかないのです。総延長670km、計画開始が2004年、25の先住民との合意を経ています。アラスカのそれはその2倍の長さとそれ以上の技術的困難さがあるのです。それならば地球温暖化を待ってノーススローブにLNGの輸出拠点を作り、そこからベーリング海経由で日本やアジアに運ぶ方がまだ理にかなっているでしょう。
では日本側が提案できるほかのカードは何でしょうか?一番直接的で即効性があるのが米国内での自動車など製造業への投資ですが、これは民間企業の責任と判断であり、政府が直接的に関与しにくいと思います。現在、造船技術の供与という話が出ていますが、これは韓国も同じカードを切ろうとしています。決め手になるカードは割と少ない気がします。その中でやはりウィンウィンになるのは防衛関連であり、駐留米軍の扱いを交渉材料にするかであります。コメについては今起きていることは個人的には一時的な問題であり、いずれ落ち着くとみており、あまりその問題に触れても意味がない気がします。大豆やトウモロコシについてはいけるかもしれません。