スイスで行われていた米中の関税交渉が終わり、その内容が公開されました。ポジティブ サプライズの感が強く、市場は安ど感に包まれている、そんな感じであります。今回の交渉は第一弾となり、双方が課していた91%部分を撤廃、24%部分を90日間施行停止にして交渉を引き続き行うことになりました。少なくとも米中双方が感情的に引き上げてきた「上乗せ部分」の大半が撤廃されたことは喜ばしいことでしょう。
ではこの交渉の勝者は誰だったのでしょうか?私が思うのは中国とベッセント財務長官だと思います。米中は相当感情的になっていた中で実務に長けたベッセント氏が理詰めの交渉を行ったと同時に、中国側も相当戦略を立てて論理だてた交渉を行った結果だと思います。つまり、中国側の代表、何立峰副首相とベッセント氏の相性が良かった可能性があります。何立峰氏は習近平氏の側近中の側近の一人とされます。

何立峰氏 Wikipediaより
私がベッセント長官が勝者だと考えたのはトランプ氏とのバランスという意味で考えてみました。トランプ氏の発言は常にOverstatementであり、それをせっせと修正作業をして形にしているのがベッセント氏にみえます。もちろん、トランプ政権には各方面の責任者がいますが、今般の関税問題については取り巻きの一部には神輿を担ぐ高官もいる中で沈着冷静な判断を下していると思います。その点において現政権で今のところ、最も実績をつくり、信用を得た人物として評価されているとみています。

ベッセント財務長官Xより
一方、トランプ氏は高関税による税収を財源として所得税減税を計画していましたが、その財源案はどんどん小さくなるように見えます。
以前、赤沢大臣が関税交渉に臨んだ際、私は結論を急ぐ必要はない、他国も真剣勝負するからその流れを見て妥結点を探ればよいという趣旨のことを申し上げました。英国、中国と続く関税交渉の行方を見る限り、日本の交渉は全体的にはフォローの風になると思います。