そもそも①村上春樹(以外の人でも)を理解したいという欲求は、人間にしかなく、AIには湧かない。その欲求がなければ、あらすじと無縁な②細部にこだわって問いを立てることを思いつかない。さらにはデータが示されても、それを③相手の内面で生じた変化の反映として解釈できない。
「この人を理解したい!」という気持ちを持つこと。それがAIに代わられない生き方の出発点になる。要約するだけなら「AIに投げれば秒で終わるジャン?」と言われてしまう今日、なにがあれば「自分にしか書けない」仕事ができるのかを、加藤さんの春樹論は教えてくれる。
土曜に出た『文藝春秋』6月号の「「保守」と「リベラル」のための教科書」で、同書を採り上げた。AI時代を生き抜くコツが、リベラルであるための条件と、ぴたり一致するとの含意を込めて。
恥ずかしながら、お気づきのとおり、いよいよ15日に発売が迫る拙著『江藤淳と加藤典洋』のCMを兼ねてでも、あるんだけど(苦笑)。
Amazonの「文学史」のカテゴリでは、発売前から1位を獲る時期もあったりしたそうだ。まさにみなさまのおかげで、感謝のかぎりである。