垂直とは言わないまでも、緩やかだった斜面が急にガクンと角度を変えて落ち込んでいます。
この原因はこれまで謎に包まれており、専門家らも首を傾げていました。
海に囲まれていた可能性が大!
現在の火星は乾燥していて埃っぽく、水はすべて氷の形をとっています。
川も流れていなければ、広大な盆地やクレーターを埋める海もありません。
しかし太古の昔、それこそオリンポス山が形成された37億年前には、火星の至るところに広大な海や湖が広がっていました。
そこで研究チームは「オリンポス山の麓の急な崖の形成には、古代の海が関係しているのではないか」と仮説を立てています。

チームは仮説の検証のため、オリンポス山と似ている地球の3つの活火山:ポルトガルのピコ島、カナダのフォゴ島、アメリカのハワイ島を詳しく調査しました。
その結果、これらの島々の海岸線にはすべて、オリンポス山の麓に見られた急な斜面構造があることが分かったのです。
その形成理由を調べたところ、火口から噴出した溶岩が空気から海面に流れ込む際の急激な冷却によって、溶岩の粘度が大きく変化し、ほぼ真下にドロドロと落ち込むようになったことが見出されました。

つまり、これをオリンポス山に当てはめると、急な崖になっている高さ約6キロの辺りに海が存在したことが伺えるのです。
パリ=サクレー大の地球科学者で研究主任のアンソニー・ヒルデンブランド(Anthony Hildenbrand)氏は「オリンポス山を囲む高さ6キロの絶壁は、約37億年前の活動的な火山であったときに、溶岩が液体の水に流れ込んで形成された可能性が高い」と説明しました。