『エクゼジェシス』に記された狂気か、それとも啓示か
この強烈な体験の後、ディックは彼が「超越的な情報」と呼ぶものを次々と受信し始める。数ヶ月にわたり、彼は数千ページにも及ぶ膨大な手記を書き続けた。今日『エクゼジェシス(釈義)』として知られるこの記録は、彼が見たもの、感じたものに意味を与えようとする、一種の神秘的・哲学的日誌だった。
そこで彼は、我々が感じる直線的な時間は幻想であり、世界は何らかの人工的な存在によって制御され、そして、ある種の超越的な知性が彼にコンタクトを取ろうとしていると結論づけた。
周囲の人々は、彼が正気を失ったと考えた。しかし、本当にそうだったのだろうか?
1977年、フィリップ・K・ディックはフランスのメッスで開催されたSF大会に招かれた。文学に関する講演が期待されていたが、それは衝撃的な告白の場と化した。度肝を抜かれた聴衆を前に、ディックは自作の小説のいくつかはフィクションではなく、前世の記憶や並行現実の記録なのだと断言したのだ。我々はシミュレーションという名の牢獄に囚われており、誰か、あるいは何かが我々の知覚をコントロールしている、と。
彼のスピーチはあまりにも挑発的だったため、FBIやCIAの諜報員がその会議に出席し、後に彼の著作を調査したという噂まで流れた。彼の周辺では原稿が盗まれたり、匿名の電話がかかってきたり、秘密裏に監視されているといった話がまことしやかに囁かれた。
晩年のディックは、何か巨大な存在が自分を黙らせようとしていると確信していたという。そして驚くべきことに、数年後に機密解除された公文書によって、FBIがフィリップを「要注意人物」としてマークし、CIAが「外国諜報機関との接触」を疑っていたことが実際に確認されたのだ。

(画像=Image by Gerd Altmann from Pixabay、『TOCANA』より 引用)