GMOインターネットグループは従業員の9割が生成AIを業務に活用し、グループ全体での月間の削減時間が約17.7万時間に上り、1人あたり月間約32.2時間を削減した。AIを活用している従業員の過半数が、ほぼ毎日、生成AIを活用しているという。同社はAI人材の育成にも力を入れており、2024年2月からオリジナルのリスキリング施策として短期AI人材育成プログラム「虎の穴」を展開し、今年1月までにグループ内の非エンジニアを中心に716人のAI・RPA人財が生まれたという。具体的に生成AIをどのように活用して業務時間を大幅に削減したのか。また、業務時間の削減によって、どのような効果が生じているのか。同社に取材した。
生成AIを活用する際に障害(ハードル)がないということを徹底
生成AIの活用に積極的に取り組むGMOインターネットグループが、同社のパートナー(正社員、契約社員、アルバイト、派遣社員、業務委託)6422人を対象に実態を調査した(有効回答5276人)。生成AIをどのように活用して業務時間を削減したのか。同社に聞いた。
「グループ会社ごと、また職種ごとに内容が変わってしまうため一概にはお話しできないのですが、パートナー(GMOインターネットグループでは、従業員のことをパートナーと呼んでいます)一人ひとりの創意工夫の積み重ねでこの数字ができていると感じます。 アンケートの回答では、文章作成や翻訳業務、アイディア出しの初期フェーズ、調査などで活用していることが多いです。 特にグループ会社であるGMO天秤AI株式会社が提供している、複数の生成AIを活用・比較できる『天秤AI』では、生成AIごとの異なる視点からの提案を比較し、一つの視点だけでは見えなかった新しい気づきやアイディアを得ることができています」
大幅な削減が実現できた要因として、従業員がAIを活用する際に障害(ハードル)が生じないことを徹底した点があげられるという。
「アンケートを取る際に『削減時間』に対する目標や想定は持っていませんでしたが、『活用率』に対して定量目標を持って、活用率を高めるための環境の提供をしていました。 活用率を高めるための環境づくりとしては、以下のような形です。
・グループ全社が安心して使える環境(安心して情報が入力でき、最新AIと連携しているSlack で使える各種AIアプリの提供、最新AIツールの各種ガイドラインの提供)
・誰でも簡単に使える高性能AIツールの環境(AI熊谷正寿「GMOイズムくん」や高性能な議事録・要約ツール)
・学べる環境(毎月開催しているGMO AIセミナー、オリジナルテストのGMO AIパスポート、AI関連の書籍が700冊以上揃った図書館GMO Libraryのリニューアル、リスキリングプログラム・社内研修「虎の穴」)
このように、活用しやすい、活用したくなる、活用する際に障害(ハードル)がないということを徹底した結果、大幅に削減時間が増加し、現在も増加し続けていると考えております。 なお、定量的な目標としては、別途『AI活用アクション』という形で、GMOインターネットグループのグループ各社それぞれがAI活用によるコスト削減と価値創造の目標を設定し、進捗管理をしています。2024年は合計で18億円分のコスト削減(+価値創造)の目標を達成しました」