結論として、消費税減税による財源欠如を無対策で放置すれば、早ければ2030年代前半にも日本は財政的破綻(急激なインフレによる経済混乱)に直面しうると考えられます。特に大幅減税(ゼロ税率)のインパクトは大きく、10年も持たない可能性が高いと言えます。 無論、実際にはこのような極端な状況に至る前に何らかの政策修正が図られるでしょう。例えばインフレ兆候が鮮明になれば、増税の議論が避けられなくなったり、国債の市場消化が困難になれば財政当局も歳出削減や構造改革に舵を切るかもしれません。また最悪の場合でも、日本には日銀による統合政府バランスシートでの債務調整(いわゆる財政ファイナンスからのMMT的アプローチ)という手段も理論上は残されています。しかしそれは通貨価値の毀損を伴う「隠れたデフォルト」に他ならず、国民の資産・生活に大打撃を与える点でハードランディングであることに変わりありません。
おわりに本稿では、日本の最新財政データを基に消費税減税・廃止シナリオを仮定し、財政破綻(またはハイパーインフレ)までの期間を試算しました。結果をまとめると以下の通りです。 消費税完全廃止: 財政赤字が年間60~80兆円規模に拡大し、約7~10年程度でインフレ率が年20%以上に達する見込み。2030年代前半にも通貨の信認喪失によるハイパーインフレ的状況に陥る恐れ。
消費税5%引き下げ: 財政赤字は年間50~65兆円規模。インフレ率は徐々に上昇し、15年程度で年10%台後半に達する可能性。2030年代後半~2040年前後にかけて危機的局面を迎えるリスクが高まる。
食料品非課税(軽減税率拡大): 財政赤字は年間50兆円弱に増えるが、インフレ率への影響は軽微で短中期的(10~15年)にはハイパーインフレの兆候は現れない。ただし債務残高は着実に増加し続けるため、長期的には構造改革なき財政運営は持続不能。
いずれのシナリオでも、「国の支出を現状維持しつつ恒久的に主要税収を減らす」ことが財政に与えるインパクトは甚大です。最も過激な消費税ゼロの場合、日本の財政破綻は遠い将来の仮定ではなく目前の現実的な懸念となります。一方で軽減的な減税策であっても、財源措置なしに継続すれば結局は将来世代へのツケ回し(国債増発)となり、その先に待つのは緩慢な破綻か急激なインフレかの違いだけです。財政健全化には歳出改革と歳入確保の双方からのアプローチが不可欠であり、減税自体を否定するものではありませんが、その穴埋め策なしに長期持続させることはできないという現実を本試算は示唆しています。