以上のシナリオ分析から浮かび上がるのは、財政破綻やハイパーインフレへのカウントダウンは「歳入不足を国債(通貨発行)で埋める期間」が長期化するほど早まるということです。

極端な消費税廃止(シナリオ1)では約5~10年で臨界点に達し、5%減税(シナリオ2)では15~20年、食品非課税(シナリオ3)では20年超と推定されました。この違いは歳入欠陥の大きさにほぼ比例しており、財政の健全性悪化ペースと、それに対する市場・国民の信頼感低下のペースを反映しています。 日本の国債がこれまで市場で大きく売り叩かれずに済んでいるのは、【①自国通貨建てであること】【②国内投資家が主体で保有していること】【③日銀が最後の買い手として機能していること】といった特殊要因によります。しかし、これらはいわば「茹でガエル」を可能にする温床でもあります。すなわち、市場の外圧や強制停止が働かない分、政府・日銀は際限なく赤字と金融緩和を継続できてしまい、その結果気付いた時には手遅れになる恐れがあります。通貨の信認は徐々に失われるうちは表面化しませんが、ある臨界点を超えると一気に瓦解します。その引き金は往々にしてインフレ率の加速という形で現れます。

インフレとは裏を返せば「通貨の信用毀損度」です。政府に財政規律が無いことが見透かされた通貨は売られ、物価が上がり始めます。初めは年数%の変化でも、それを放置すれば年10%、20%…と指数関数的に上昇し、最終的に貨幣としての機能を失いかねません。

本分析ではインフレ率が年間20~30%に達する状態を事実上のハイパーインフレ到来とみなしました。シナリオ1では約7~8年後にこの域に達し、シナリオ2では15年弱で10%台後半に近づく結果となりました。シナリオ3では5%程度で横這いでしたが、長期的に見れば債務累積が続く限りいずれリスクは増大します。