一方で、卵黄を混ぜると絵具が乾燥するのに時間がかかるという欠点も見つかりました。
そのため、絵具を塗り直したり、塗り重ねるには時間がかかったと考えられます。
それでも研究主任のオフェリエ・ランケ(Ophélie Ranquet)氏は「非常に少量の卵黄でも油絵具の特性を驚くほどに変化させ、芸術家にとって有益な効果が数多く得られたでしょう」と話しています。
本研究には参加していない米シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)のケン・サザーランド(Ken Sutherland)氏は「歴史的な巨匠たちがどのような材料を使ったかを理解することで、創作過程や最終の完成品をより正しく評価できるでしょう」と指摘。
その上で「美術品そのものの理解を深めるだけでなく、オールド・マスターの芸術作品の保護に役立つ可能性がある」と述べました。
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参考文献
Examining why egg yolk was used in Old Masters’ oil paints
https://phys.org/news/2023-03-egg-yolk-masters-oil.html
Here’s why some Renaissance artists egged their oil paintings
https://www.sciencenews.org/article/renaissance-artists-egg-oil-paintings
元論文
A holistic view on the role of egg yolk in Old Masters’ oil paints
https://www.nature.com/articles/s41467-023-36859-5
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。