レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、フェルメール、レンブラントなど、ルネサンス期から18世紀のヨーロッパで活躍した巨匠画家を「オールド・マスター(Old Master)」と呼びます。

これまでの研究で、オールド・マスターたちは油絵具に「卵黄」を加えていることが知られていました。

実際、巨匠たちの遺したマスターピースからも卵黄のタンパク質がしばしば検出されています。

しかし、卵黄を混ぜることにどんな効果があったのかは分かっていませんでした

そんな中、独カールスルーエ工科大学(KIT)、伊ピサ大学(University of Pisa)らの2023年研究で、ついにその謎が解き明かされたのです。

卵黄にどんなメリットが隠されていたのでしょうか?

研究の詳細は2023年3月28日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されています。

目次

  • 卵黄を加えることはメリットだらけだった
  • 唯一の欠点は「乾燥までに時間がかかる」

卵黄を加えることはメリットだらけだった

研究チームは、オールド・マスターたちが使用した種類の油絵具に卵黄を加えて、その性質がどのように変化するかをテストしました。

実験では、顔料と油を混ぜた普通の油絵具と、油絵具に卵黄を混ぜたものの2種類を作製。

これらの絵の具を使って実際と同じようにペイントを行い、水分量や粘度、乾燥するまでの時間、酸化度などを測定しました。

ただ詳しく分析する前に、卵黄を混ぜた絵の具には明らかな違いがすぐに表れたそうです。

通常の油絵具は粘度の低いサラサラした状態を保つのに対し、卵黄を加えた方は粘度が高まり、マヨネーズに似た質感に変わりました。

こちらが両者の粘性を比べた40秒ほどの動画です。

そして卵黄を混ぜることで油絵具には数多くのメリットがあることが判明しました。

まず、卵黄で粘性が高まったことからも分かるように、顔料の粒子同士の結合が強くなり、より硬い絵具になっています。