ところで、創業当初はどのような仕事でも受けるべきですが、徐々に事務所の方針を変えていくこともひとつの経営戦略です。特に行政書士や司法書士などその資格の名称だけで仕事の内容が世間的にあまり認知されていないような資格は、何かひとつ専門に特化したほうがお客様の印象にも残り、営業的にも楽になります。

私の場合は、開業から1年ほど経過した時、あるきっかけで「会社設立」を専門的に扱うようにしました。その結果、業務効率は高まり、紹介は増えていきました。一般の人は「行政書士の仕事をしている人」はいまひとつ理解できなくても、「会社をつくる人」はわかります。こうして仕事を増やしていったのです。

ただ、専門特化したからといって、他の仕事を受けないわけではありません。会社設立の仕事が完了した後、ほかの取り扱い業務も伝え、結果として多様な仕事を受注します。まずは入り口を絞るのです。創業から数年はこのようなスタンスでした。

その後、さらに仕事が増えてきてからは、設立の仕事のみというスタンスに変更し、基本的にはこの仕事のみでやっていくことにしました。結果として仕事は増え、効率も高まっています。

ところで、戦略的に業務方針を絞って成功している事務所は多数あります。しかし、そういった専門的事務所にも盲点があるのです。それは、専門外の仕事が来たときに断ってしまうということです。「絞ったのだから、断るのは当たり前では?」と思われるかもしれませんが、せっかくの問い合わせに対してお断りをすると、声をかけてくださったお客様はとても残念に思います。場合によってはあなたの印象が悪くなることもあるでしょう。

ですから、ただ単に断るのではなく、別の適任者を丁寧に紹介することが必要になります。このように専門外の仕事でも丁寧に接することによって、また仕事が入ってくる可能性が高まります。こうした積み重ねが重要なのです。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 特定行政書士 1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。 会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚