ここで言われる「差別」や「暴力」とは、いったいなんなのか? なんの具体例もない以上、この文章は「私たちと違うトランスジェンダー問題の捉え方は、差別であり暴力なのだ」と、一方的に宣言するものにすぎない。
その直前の段落には、
多くの人の感情に訴えかけ、SNS上での「拡散」を通じて主張を広めるという実践のありかたには、複雑な現実を過度に単純化したり、「敵・味方」関係を固定化させたりといった、限界が付きまといます。……
現在では、多くのフェミニスト研究者もSNSを利用していますが、とりわけフェミニズム研究を行う者たちは、このような限界につねに自覚的でなければなりません。
と書いてあるのに、次の段落では自らそれを裏切っているわけだから、この趣旨文の著者の知能の程度は相当に低いと断じてかまわない。
さて、「SNS上での「拡散」を通じて主張を広め」た結果、「複雑な現実を過度に単純化し」、「「敵・味方」関係を固定化させた」果てに大炎上して消えたフェミニズムの運動の例として、私たちは2021~22年にTRA(Trans Rights Activists)が主導したオープンレターを、もう知っている。
確認がくどくて恐縮だが、TRAの主張は「トランスジェンダー女性は100%の女性であり、当然に女性スペースの利用や女子スポーツへの参加が認められ、違和を唱える行為は差別だ」というもので、そのオープンレターとの密接なつながりは、具体的な人名も挙げて上記の記事で分析した。