末尾に名簿を示すとおり、むしろ逆にかつて「オープンレター」に集った彼ら・彼女らは、一見すると価値中立的に見える「現代フェミニズム研究会」なる別団体を立ち上げ、上記のように趣旨文にこっそりとTRAの主張を書き込み、非公然の形で支持者を集める路線に転換している。

これは旧統一教会などの新興宗教が、学生の信者をリクルートする上で用いたことで有名な「ダミーサークル」の手法だ。最初は特定の宗旨との関連を名乗らず、「現代の生きづらさを考える勉強会です」といった名目でメンバーを勧誘し、徐々に信仰を刷り込んでゆくのである。

ダミーサークルを使った学内での新歓に 警戒を呼び掛ける慶応大のチラシ。 2022.8.12の朝日新聞より

「大学の先生が、まさか」と思うかもしれないが、実際に「現代フェミニズム研究会」の賛同人名簿には、こう書いてある。

研究会にご参加のうえ賛同いただける方は、順次こちらに追加していきます。

要するに5/10の研究会を聴講に行った場合、明確に「拒否」の意思を示せばむろん別だろうが、なんらかの手段で「会の趣旨に賛同した」と見なされた際に、TRA的な主張を含む趣旨文の賛同人として名前が載ってしまうリスクがあるわけだ。まことに、大学キャンパスの一寸先は闇である。

後日、別の記事を出す予定だが、この旧統一教会めいたTRAの蠢動は、新たな(ダミー)サークルの立ち上げのみでなく、既存の学会の乗っ取りにまで発展しつつある。「学問の自由の危機」とは、こうした事態をいう。