一般的に、古代エジプト文明の始まりは紀元前3000年頃、最初のファラオとされるメネス(ナルメル)王の登場からとされている。しかし、一部の古代文書を根拠に、「エジプト文明の歴史は少なくとも4万年前に遡る」と主張する人々がいる。果たして、これらの文書は歴史の真実を語っているのだろうか? それとも、単なる神話や伝説の類なのだろうか。
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「神々が統治した時代」― 古代文書の記述
この「エジプト文明4万年説」の根拠とされるのが、マネト(古代エジプトの神官で歴史家)、トリノ王名表、パレルモ石といった古代の記録だ。これらの文書には、初代の「人間の」ファラオが登場する以前、すなわち先王朝時代に、神々や半神(デミゴッド)と呼ばれる存在がエジプトの地を長期間にわたって統治していた、という記述が含まれているという。
例えば、マネトの記録やトリノ王名表を文字通り解釈すると、創造神プタハの王国は約3万9千年前に始まり、その後「神々」が2万年以上、「ホルスに従う者たち」と呼ばれる半神が統治した時代が続いた、と読み取れるとされる。ローマ時代の歴史家エウセビオスも、神々の王朝が1万3900年、英雄や半神の王朝が1万1025年続いたと記しており、合計すると約2万5千年にも及ぶ。
これらの記述を信じるならば、人間のファラオが統治を始める紀元前3000年よりも、はるか昔からエジプトには高度な統治体制が存在したことになる。

(画像=パレルモ石 Giovanni Dall’Orto – 投稿者自身による著作物, Attribution, リンクによる,『TOCANA』より 引用)