メルツ党首とSPDのクリングバイル党首(副首相兼財務相)は5日、連立協定(144ページ)を署名した後、メルツ氏は「ドイツ経済の回復と投資の促進」の2点を大きな課題に挙げていた。一方、クリングバイル氏は「ドイツの復興のためにチームプレーを大切にしたい」と述べていた。皮肉にも、6日の1回目の投票結果は、与党間の連携が重要であることを改めて明らかにしたわけだ。
連立協定のタイトルは「ドイツに対する責任」と記されている。「欧州の盟主」ドイツの国民経済はリセッションだ。ワシントンからトランプ米大統領の関税攻勢が進展中だ。一方、ウクライナ支援問題でもドイツの積極的な貢献が求められている。ドイツが本来の指導力を発揮することを願う国も多い。メルツ新政権の前には多くの課題が山積している。
欧州のメディアの中には、「メルツ氏は閣僚経験もない政治家で、その政治手腕は不明だ」といった論評が聞かれる。それに対して、CDU議員の中には、「メルツ氏は政治の世界ばかりか、経済に精通した実業家出身だ。経済が分かる政治家は国家にとって有益だ」と指摘する。
いずれにしても、政治の世界で何度も「敗北」を経験したメルツ氏はその痛みを誰よりも知っているはずだ。激動時代に直面している現在、それは国家運営で強みとなることもあり得るだろう。
メルツ氏は6日、ドイツ公営放送とのインタビューで、「(首相に選出されて新政権がようやく発足したことで)安堵したが、同時に、少々疲れた」と吐露している。

メルツ首相インスタグラムより
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。