「ずっと痛みが消えない」「検査では異常がないのに、なぜか痛い」

こうした慢性的な痛みに悩まされている人は決して少なくありません。

日本だけでも、腰痛や頭痛、肩こり、線維筋痛症など、日常生活を蝕む慢性疼痛に苦しむ人は数百万人にのぼります。

しかし、こうした痛みに有効な治療法は限られており、薬やリハビリに頼ってもなかなか効果が出ないケースも多くあります。

そんな中、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究チームは、脳の活動パターンを再教育することで慢性疼痛を緩和するという画期的な研究成果を報告しました。

研究の詳細は、2025年5月6日付の『JAMA Network Open』誌で発表されています。

目次

  • 痛みが持続する「慢性疼痛」とは何か? なぜ「脳の再教育」が必要なのか?
  • 「脳の再教育」が慢性疼痛の痛みを和らげると判明

痛みが持続する「慢性疼痛」とは何か? なぜ「脳の再教育」が必要なのか?

慢性疼痛(まんせいとうつう)とは、通常の治癒期間を超えて持続する痛みのことを指します。

例えば、慢性腰痛、慢性的な頭痛、全身に痛みやしびれが広がる「線維筋痛症」、ストレスや不安で生じる「心因性疼痛」などが該当します。

これらは単なる症状ではなく、神経や脳の働きが変化し、痛みがひとつの「病気」として独立して存在すると考えられています。

そして慢性疼痛では原因が見つからない場合が多く、精神的ストレスや不安とも密接に関係しており、通常の鎮痛薬が効きにくいという特徴があります。

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慢性的な痛みを感じる「慢性疼痛」。脳にも原因が? / Credit:Canva

過去の研究では、痛みの感じ方が脳に大きく依存していることが分かってきました。

特に、前頭前皮質と呼ばれる「脳の感情をコントロールする領域」の働きが弱くなると、痛みのブレーキが効かなくなり、わずかな刺激でも「痛い」と感じてしまうようになります。