生成 AI は既に議事録要約(例:Notta)、経費精算チェック(例:LayerX インボイス)などを代替し始めた。新人が腕慣らしで任される定型業務こそ真っ先に消える。そうなれば企業はますます 「習熟コストが低い人材」より「最初から戦力になる人材」 を選好するため、静かな退職組は労働市場で行き場を失う恐れが大きい。
当然、そうなれば「スキルや経験のない新入社員はどうやって仕事を学べばいいのか?」という懸念も出てくる。
だが、希望がないわけではない。AIが苦手とするのは関係構築と信頼醸成と考える。これはAIというシステムへの信頼の有無を問うものではない。人がお金を出すのは、相手のスキルだけでなく「人間性」といった信用も含めてベットするのが商慣習となっているといいたいわけだ。
顧客の本音を引き出し、長期取引へ導く営業力や、現場でトラブルを丸く収める調整力は、学習データだけでは再現しにくい。したがって 「信用残高を積む仕事」 がキャリアの保険になる。
Q5.静かな退職にメリットはあるのか?
「静かな退職を選ぶことに何かメリットはあるか?」という問いに対して、自分は「空いた時間の使い方次第」と答えた。
確かに静かな退職は精神的には楽である。出世を望まず、残業も回避するので時間と精神的余裕が生まれる。その時間を副業やスキル習得に使えば、ある意味で本人にとっては合理的な戦略とも言えるかもしれない(雇用する側にとっては「コスパがいい人材」とは言えないかもしれないが)。
ただし、余暇時間で遊んでばかりとなれば年齢とともに市場価値が下がり、「仕事ができない、やる気もない中年」への一本道が待っているだけだ。そうなれば再就職が困難になることは避けられない。
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最後に改めて述べておきたい。筆者は静かな退職そのものを「ケシカラン」などと昭和臭く否定するつもりはない。重要なのは、「余暇」をレバレッジに変えられるかである。