特殊相対性理論では光速度不変や時間空間の対称性といった簡明な原理から「何者も光速を超えられない」という結論が導かれていますが、量子論にはそれに相当する直観的な原理の導出が無かったのです。

しかし今回示された排他性原理による制限は、「なぜ自然は量子もつれ以上に非局所ではないのか」という疑問に対する解答を与えるものです。

言い換えれば、「自然界は奇妙でありうる限り最大限に奇妙だが、それを超えて奇妙にはならない」というわけです。

もちろん、この結論は「量子論が適用できるあらゆる現象で正しく機能している」という前提に基づいています。

将来もし量子論の枠を超えた振る舞い(ポスト量子現象)が実験で発見されれば、排他性原理そのものを再検討する必要が生じるでしょう。

しかし現在までのところ、量子論を超える相関は確認されておらず、自然の振る舞いは常に量子論の予測内に収まっています。

そして本研究は、その事実を支える背後の原理として「確率の合計は100%を超えない」という縛りの真理性を浮かび上がらせました。

今後、この成果は量子情報や基礎物理の分野においてさまざまな波及効果をもたらす可能性があります。

例えば、量子コンピュータや量子暗号の計算原理は量子もつれの強力さに支えられていますが、「これ以上強い相関がない」ことが保証されたことで、それらの理論的な限界がより明確になるかもしれません。

また、量子論の公理化(少数の基本原理から量子力学を導く試み)において、排他性原理が重要なピースになる可能性があります。

研究チームの成果は、量子論が「なぜそのような奇妙さで止まっているのか」という長年の謎に光を当て、自然界の基本的な仕組みを一段と深く理解する手がかりとなるでしょう。

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元論文

Unexpected consequences of postquantum theories in the graph-theoretical approach to correlations
https://journals.aps.org/pra/accepted/1707aNb8Me61582bf2106f18967bac831dd8b07b5