調査にあたってはまず、ある測定シチュエーションにおける相関の集合を調べ上げ、それと関係が裏返しになるもう一つの集合を用意し、両方に「確率の合計100%を超えない」というルールをかけました。
これは例えるならば2つはコイン投げの確率を2派閥にわけるという操作を量子の世界で検証したものと言えるでしょう。
すると量子が取り得る相関パターンは“ここまで”という境界線がはっきり現れ、量子力学が予言する上限とピタリ一致。
この結果は、「自然界で実現しうるすべての相関が量子論の枠内にあるならば、排他性原理によって量子論を超えるような相関(超・量子)は一切実現できない」というものです。
つまり量子もつれが発揮できる強さは、すでに宇宙が許す上限ちょうどいっぱいまで来ていて、それ以上の結びつきは原理的に弾かれてしまうわけです。
実際、論文では「排他性原理は基本的な限界を課し、量子論を超える理論の存在を(その原理だけで)否定する」と結論付けています。
この結論は、前述のアマラル氏らの限定的な結果を大きく一般化し、あらゆる状況に適用できるものとなりました。
今回の成果は数学的な証明ですが、現実の実験結果とも矛盾しません。
これまで多くの離れた粒子間の関係の強さを確かめる実験が行われてきましたが量子を超えるの相関は観測されていません。
今回の理論成果は、その観測事実を“なぜそうなるのか”という根っこから説明してくれる、強力な裏付けになったと言えます。
量子もつれが上限ギリギリと判明

本研究によって、量子もつれが「この宇宙で最も強い絆」であり、その強さには原理的な上限があることが明確に示されました。
これは量子論の基礎に関する非常に重要な知見です。
量子力学は極めて成功した理論ですが、「なぜ量子論はその形をしているのか」を説明する基本原理を欠いているとも言われてきました。