これは宇宙の端と端まで関係を繋げられるのに、それでも光の速度を超えた情報伝達はできないという点では「量子もつれ」と同じですが、理論上は量子もつれよりもさらに強い相関関係を持てると考えられています。

量子もつれの時点で距離無限大の関係を結ぶ力があるのに、ポプレスク–ロールリッヒのボックスはそれ以上というわけです。

ただこうした量子理論を超えた相関は理論上はあり得るにもかかわらず、現実の実験では確認されたことがありません。

なぜ宇宙には量子論以上の関係の強さを持つものは発見できないのか?

この問い(量子の相関の限界を決める原理は何か)は、量子論の根本に関わる未解明の謎として長年議論されてきました。

これまで物理学者たちは、この謎に答えるため様々な原理仮説を提案してきました(「通信の複雑性の非自明性」「情報因果律」「局所的直交性」「巨視的局所性」など)。

その一つが「排他性原理」(Exclusivity Principle, EP)です。

難しそうな名前ですが、内容は小学生でもわかるものです。

ここで言う排他性原理を極簡単に言えば、起こり得る全ての確率をいくら足し合わせても、その合計は100%を超えない、という当たり前すぎるルールです。

たとえば投げたコインが平らな地面に落ちた時に、表になる確率と裏になる確率、そして立ってしまう確率、さらに奇跡が起きて微妙に斜めに傾いた状態で安定してしまう確率など、ありとあらゆる可能性を集めまくって合計しても、その確率の合計は絶対に100%を超えません。

表になる確率が55%で裏になる確率も55%で、立ってしまうレアケースが1%で足したら111%というのがあり得ないのは、小学生でもわかるでしょう。

量子の世界は不可思議で直感的にあり得ないことが起こることが知られていますが、一部の理論ではそんな量子の世界も、100%を超えないというルールが適応されると主張しています。