インフレ税は理論的には最適課税だが、うまく行くとは限らない。黒田ショックのときのように海外ファンドは「日本政府は債務を返済する意思がない」と判断して国債を売り、国債が暴落して金融危機が起こるかもしれない。
その成否は政権が4~5%のインフレをコントロールできるかどうか、またそれを国民が支持するかどうかにかかっている。日銀はインフレ目標を超えるインフレは利上げで抑制しようとするだろう。そのとき日銀を説得して国債の大量発行を続けられる政権があるだろうか。
安倍首相ならできたかもしれないが、石破首相には無理だろう。玉木氏が首相になれば「マイルドなインフレ税」を続けることも可能かもしれない。だがこれは政府の信認を傷つけるので、金利上昇→インフレ→金利上昇というスパイラルに入り、金融危機でトラス・ショックのような地獄を見るリスクも大きい。
いずれにせよ消費減税は「物価高対策」ではなく物価高を加速する政策だが、国民のほとんどはそれを増税とは感じないだろう。それが最大のメリットである。国民が4~5%のインフレを容認するなら、この政策は持続可能である。
これは安倍政権の試みたリフレとは違うが、人為的な財政インフレという点ではより危険な政策である。本当に実行するなら政府と日銀のアコードを改正して政府がインフレ率をコントロールし、国債発行を管理する独立行政委員会を設けるなどの制度設計が必要である。