さらに大事なことがあります。
「新規事業プロジェクトでは、私たちが当初想定していたことは間違いも多い」ということです。
これは「最初の顧客」と話をしてみると、すぐにわかります。試しにこんな質問をしてみてください。
「御社は、どんな課題を持っていましたか?」 「この商品を買おうと思った決め手は何ですか?」 「この商品を購入して、どんな変化がありましたか」 「この商品の満足度と、改善要望は何でしょうか?」
私たちが想定していたのとは、全く違った答えが返ってくることも少なくありません。これは実に貴重な学びです。
私は過去に企画した製品で、こんな経験をしました。
この製品は企業向けソフトウェアで、お客様のデータをどんなことがあってもガッツリと守ることが売りでした。当時、競合他社の商品はそんなことはできなかったのです。
しかし最初に採用してくださったお客様にお話しを聞いたところ、全く違う理由で採用されていたのです。
「あ、この製品を採用した理由ね。サーバー側のソフトは有料だけど、パソコン側のソフトは無料配布できるでしょ。ウチの会社、パソコン何台にこのソフトを展開するか、決まっていないんですよね。この製品はパソコンが何台あっても無料でいくらでも配布できるから、これにしたんですよ」
私は驚いて聞き返しました。
「ええと…。この製品はデータをガッツリ守ることが他社にない最大のウリなんですけど、その点はどうお考えになったんですか?」
「あ、それは確かにいいですね。でもデータが消えたら、入力し直せばいい話ですから。バックアップも取ってるし」
つまり、この製品の最大のウリは、当初の想定とはまったく別の所にあったのです。
ということで、自分が「これがウリだ」と思っていても、実は本当のウリは全く別のところにあることも少なくありません。
だからこうして得た学びを、新規事業プロジェクトの製品デザインや売り方、プロモーションの方法に反映していけば、お客様をより確実に獲得できるようになります。