こうして1982年に発表したのが、トロオドンを下敷きにした恐竜人間「ディノサウロイド(Dinosauroid)」です。

これは発表当時も話題になっていたので、この恐竜人間の姿を昔テレビで見た覚えがあるという人もいるかもしれません。
ラッセルによると、ディノサウロイドは身長170センチほどで、全身がウロコに覆われています。
頭部は爬虫類の形態を残していますが、その他は現在のヒトの体型に近いという。
大きな脳と3本の指を持ち、うち1本はヒトの親指と同じく、道具をつかめるよう他の2本に対向しています。
尾はすでに退化しており、かかとを接地させる直立二足歩行を発達させています。
また、哺乳類ではないので乳房はありません。
そこで母親は、子どもが幼いうちは現代の鳥類と同じように、食べ物を胃から出して与えるとのこと。
言語については、ある種の鳥の鳴き声のようなものが想定されていました。

ラッセルの唱えた「ディノサウロイド」は、当然というべきか、科学者よりもSF作家たちの関心を強く引きました。
また恐竜たちは現に絶滅してしまっているので、ディノサウロイドをそれ以上掘り下げてもあまり有益ではありません。
しかし姿形はどうあれ、恐竜たちが生きていれば、本当に”知的生命体”に進化し得たのかどうかは気になるところです。
英バース大学(University of Bath)の古生物学者ニック・ロングリッチ(Nick Longrich)氏は、これまでの恐竜学の知見を踏まえて、この疑問に答えました。