2001年から17年間にわたり、世界中の毒ヘビの毒を自身の体に合計856回も注射した男性がいたのです。
彼(ティム・フリード氏)は、少量の毒を何度も体に打ち込むことで免疫系を鍛え、どんな毒にも反応できる抗体を自らの体内に作り出そうとしていました。
彼が扱った毒には、ブラックマンバ、タイパンなどが含まれており、その種類は極めて多様です。
そして、この“ハイパー免疫者”の血液は、まさに解毒剤の宝庫でした。
彼の体は、一度に数種類のヘビの神経毒に効果のある抗体を生成していたのです。
そこで研究チームは彼の血液から毒に対して幅広く反応する抗体を選別しました。
その結果、2種類の強力な抗体(LNX-D09とSNX-B03)が発見されました。
さらに、既存の毒素阻害剤であるバレスプラジブ(varespladib)を加えることで、3成分からなる解毒カクテルが完成したのです。
「3剤カクテル」は猛毒19種に保護効果を示す!万能薬の誕生に近づく
この解毒カクテルは本当に有効なのでしょうか。
研究チームは、WHOが最も危険と定めるカテゴリー1および2に分類された毒ヘビ19種の毒液を用い、マウスを使った実験を行いました。
対象となったヘビは、ケープコブラ、ブラックマンバ、キングコブラ、タイパン、タイガースネークなど、地域も属も異なる猛毒種でした。
それぞれの毒液を致死量でマウスに注射したところ、当然ながらすべてのマウスが死亡しました。
しかし、LNX-D09、SNX-B03、varespladibの3剤カクテルを投与すると、すべてのケースでマウスに対する防御効果が得られました。

研究チームによると、この新しい抗毒素(毒素を中和できる抗体のこと)は「13種類の毒に対して100%の防御効果を示し、残りの6種類の毒に対しては部分的な防御効果を示した」とのことです。