そして先行研究(Current Biology, 2015)によると、真の鳥類が化石記録に現れるのはジュラ紀の中期から後期(約1億6500万〜1億5000万年前)です。
米テキサス大学オースティン校(UTA)の古生物学者は、最初の殻付きの卵はそれより遥か以前の約3億2500万年前に進化したと述べています。
つまり、「鳥を産むための卵はニワトリよりずっと前に誕生したことになる」と考えられるのです。
これにて論争は一件落着… かと言えば、そう単純は話でもありません。
最初に指摘したように、この問いは「卵」をどう定義するかで変わってくるのです。
生物学者たちはこう言います。
「もし”最初のニワトリ”が産んだ卵の話をしているのなら、答えは逆転する」と。
「最初の鶏卵」から見れば、ニワトリが先?
現生するニワトリ(学名:Gallus gallus domesticus)の祖先種は、今から約5000万年前にセキショクヤケイ(学名:Gallus gallus)の亜種から進化したと言われています。
それから昨年の研究(PNAS, 2022)では、東南アジアに住んでいた人類がBC1650〜BC1250年のどこかで初めてこの祖先種を家畜化したことで、現在のニワトリが進化したと指摘されました。
遺伝学の観点からすると、その最初のニワトリは、まだニワトリとは呼べない種の突然変異によって誕生したと考えられます。
よって、この突然変異体が成長して大人になった鳥が「最初のニワトリ」であり、その鳥が産んだ卵こそ「最初のニワトリの卵」なのですから、この場合の答えは「ニワトリが先」となるのです。

また2010年に発表された英ウォーリック大学(UoW)の生化学研究が「ニワトリが先」説を後押しすることになりました。
研究チームは、鶏卵の殻と雌鶏の卵巣の両方に含まれるタンパク質「ovocledidin-17」に、ニワトリの体内で卵の殻の形成を促す働きがあることを発見。