「卵が先か、鶏が先か」

誰しも一度は耳にしたことのあるこの問題は、一般的には「どちらが原因として先にあるか分からない」という比喩的な意味で用いられ、古代ギリシア時代から存在していました。

しかし文字通りに受け取って考えた場合、その答えはどうなるのでしょうか?

「ニワトリは卵から生まれるが、卵はニワトリによって産み落とされる」

なんだか思考の迷宮に陥りそうですが、進化生物学的にはこの問題にきちんとした答えがあるようです。

生物学者たちの本気の見解を見ていきましょう。

目次

  • 「硬い卵」の進化から見れば、卵が先?
  • 「最初の鶏卵」から見れば、ニワトリが先?

この記事の動画解説はコチラ↓↓

「硬い卵」の進化から見れば、卵が先?

この問題は「卵」をどのように定義するかで答えが変わってきますが、生物学者の多くは「卵が先」と明言します。

まずもって、ニワトリが産むような「硬い殻を持つ卵」の獲得は、太古の昔に有羊膜類の動物たちが成し遂げた一大革命でした。

有羊膜類は文字通り、羊膜を持つ動物たちのことで、主に爬虫類、鳥類、哺乳類のグループが含まれます。

羊膜とは、動物の発生の過程で形成される胎児と羊水を包む胚膜のことで、これにより地上の乾燥に適応した硬い卵が産めるようになりました。

ベルギー王立自然史博物館(RBINS)の古生物学者であるクーン・スタイン(Koen Stein)氏は「硬い卵は有羊膜類の動物たちが水環境から離れていくことを可能にし、脊椎動物の進化を飛躍させる重要なステップとなった」と話します。

この卵が誕生する以前、脊椎動物たちは繁殖のために水域に依存しなければなりませんでした。

それまではゼラチン状の柔らかい卵だったので乾燥に弱く、常に水中で保持しておく必要があったのです。

魚類や両生類は今でもこの方法を取っています。

硬い卵が進化しなければ、鳥類は生まれてこなかった
硬い卵が進化しなければ、鳥類は生まれてこなかった / Credit: canva