カプセルの中には、それぞれ異なる薬剤を封入した複数の小部屋があり、それぞれが腸で溶けるバリアで仕切られています。

このバリアは「pH-responsive polymer」という特殊なポリマーで作られており、胃酸で溶解せず、アルカリ性の環境で溶解する性質を持ちます。

そのためこのポリマーの濃度を変えることで、各バリアがどの時間に溶けて薬を放出するかを数十分単位で調整可能となっています。

つまり、たった1つのカプセルに、たとえば「朝8時に1種類目」「正午に2種類目」「夕方6時に3種類目」のように、時間差で異なる薬を放出する“タイマー機能”が組み込むことができるわけです。

さらに注目すべきは、このカプセルがただ自然に溶けるだけではないという点です。

研究チームは、カプセルの外層にマグネシウムの微粒子を含めました。

このマグネシウム粒子が放出されると、胃酸と反応して泡が発生。薬剤を周囲に効率よく拡散させることができます。

これは、鎮痛剤、心血管薬、救急治療薬など、迅速な吸収が求められる薬剤に特に有効です。

また、マグネシウムには胃酸を中和する働きがあり、一時的・局所的にアルカリ性環境を作り出せます。

これにより、より精密にバリアを溶解をコントロールし、薬剤を放出させることも可能なのです。

そしてこの新しいカプセルを用いた実験も行われました。

新カプセルが朝、昼、夜にそれぞれの薬を放出することに成功

研究チームは、このタイマー付きカプセルを使った試験で成功を収めています。

試験に用いられたのは、パーキンソン病の治療薬「レボドパ」です。

パーキンソン病の患者は、運動機能の維持のために、1日に何度も時間を空けてレボドパを服用しなければなりません。

そして試験では、レボドパを3つの色に染めて、それぞれを溶解時間をずらしたバリアの中に入れました。

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Credit:Joseph Wang(UCSD)et al., Matter(2025)