しかし意外なことに、近年の研究ではこの質問に対して、動物の命を優先すべきと答える「グループ」が報告されるようになってきました。
そう言われると、そのグループとは「過激な動物愛護団体」や「極端な平等主義者」だろうと想像するかもしれません。
しかしこれはそのどちらでもなありません。
人間より動物の命を優先すべきという倫理観を示したのは「幼い普通の子供たち」なのです。
もし本当ならば、幼い子供たちは人間と動物の命について大人と異なる選択基準を持っていることになります。
そこで今回、ハーバード大学らの研究者たちはポーランドの6歳から9歳の170人の子供と18歳から50歳の大人178人に対して、人間の命と動物の命を選択する「トロッコ問題」に答えてもらうことにしました。

なお実際の調査には子供たちの直感的な選択を引き出すために、上の図のようなレゴが用いられました。
(※列車事故にあった遺族の訴えなど現実的な情報は、子供たちの純粋な直感的判断を阻害する要因となります)
結果、人間の命と犬の命を比べた場合、子供たちの42%が「人間の命より犬の命を優先する」と回答したことが判明。
一方、大人たちの場合「犬の命を優先する」と答えたのは全体の17%に過ぎませんでした。
また人間とチンパンジーを比べたケースでは、子供たちの28%が「人間の命よりチンパンジーの命を優先する」と答えた一方で、11%の大人たちだけが「チンパンジーの命のほうが優先」だと答えました。
この結果は、幼い子供たちにとって人命優先という判断が大人に比べてかなり希薄であることを示します。