そして分析の結果、直射日光の下で干したタオルからのみ、香水の原料としても使用される化合物のアルデヒドやケトン、香辛料のカルダモンに含まれるペンタナールが検出されたのです。

さらには、柑橘系の爽やかな香りのもとになるオクタナール、バラのような香りがするノナナールなども見つかりました。

こうした化合物が「お日様の匂い」の正体だったのです。

どうして天日干しで「いい匂い成分」が発生するのか

プグリエーセ氏は、天日干ししたタオルからこれらの化合物が発生した理由について「空気中のオゾンガスや日光の働きのおかげ」だと考えています。

具体的には、濡れたタオルの素材と空気中のオゾンガスが反応することで、アルデヒドやケトンが生成されるという。

それから、濡れタオルに含まれる水滴が虫眼鏡のように機能して太陽の紫外線を集光し、それによりタオル中の化学物質が活性化して、匂い成分の合成が促されるとのこと。

またタオルに含まれる顔料や染料も太陽光を吸収して化学変化を起こすことが知られています。

氏によると、こうした化学反応は雨後の草むらなど多くの場所で発生しているそうですが、特に天日干ししたタオルから香りやすいのは、綿の繊維が匂い成分を閉じ込めて保持しやすくなっているからと指摘します。

やっぱり「ダニの死骸」じゃない!

ということで、布団や洗濯物の「お日様の匂い」はダニの死骸ではないことが分かりました。

実は日本の化粧品メーカーであるカネボウ化粧品が2001年に、ダニの死骸ではないことをより直接的に調べた研究結果を報告しています。

同社の実験では、綿などの繊維に含まれるセルロースが直射日光によって分解され、脂肪酸やアルデヒドといった微量な揮発性物質を発生させることが確認されました。

これはプグリエーセ氏の研究結果とも合致します。

「お日様の匂い」にはリラックス効果も
「お日様の匂い」にはリラックス効果も / Credit: canva

また実験では、ダニが存在しない条件下でも「お日様の匂い」が発生したことから、ダニの死骸とは無関係であることが実証されました。