また、健康状態(肥満の有無や学校の欠席率など)や「生まれ持った背景」(家庭環境や遺伝的要素)の影響を排除すると、順位差は縮まりましたが、それでも背が高い子どもにわずかな学力上昇が残るという結果は変わりませんでした。
特に興味深いのは、絶対的な身長だけでなく、「クラス内でどれくらい背が高い位置にいるか」という相対的位置も、特に英語のスコアに独立した効果を持っていました。
同じ背丈だったとしても、そのクラス内の背丈の順位が一番高い子は、一番低い子に比べ、英語でスコアが高かった(最大0.05標準偏差)のです。
これは、教師からの期待や周囲の扱われ方が微妙に違うことが、子ども自身の自己評価や学び方に影響を及ぼしている可能性を示唆しています。
もっとも、算数ではこの影響は見られず、またその差も決して劇的ではありません。
では、この結果は、子どもの将来にどの程度の影響を与えるのでしょうか。
別の大規模研究では、小中学生の標準テストスコアが1標準偏差上がると、将来の収入が約12%増えると推計されています。
今回の「背の高さ効果」はそこから見れば、たった0.6%程度の収入差にとどまります。
そのため、今回の結果からは、身長プレミアムの効果が子供時代の身長差と学力の影響から生じているとは、言えないかもしれません。
しかし、今回の研究は非常に大規模なデータを検証しており、そこには僅かな差であるとは言え、一貫して身長が高いほど成績順位が上がる傾向を示しているというのが興味深い点です。
また、この研究が示した身長の絶対値ではなく特定集団内での身長順位(相対的身長順位)が一部の科目で成績順位に影響していたという結果は、「身長で社会的にどう見られるか」がパフォーマンスに影響している可能性を示しています。
アジア圏では、身長プレミアムがあまり見られず、欧米でこの効果が顕著な理由もここにあるのかもしれません。