実は、皮膚に付着するカイアシの除去はジンベエザメにとっても有益です。

たとえば、カイアシ類があまりにも大量に繁殖すると、水の抵抗が増えて泳ぎに支障をきたすことがあります。

あるいは皮膚に紛れ込んだ有害な細菌は傷口から侵入して、感染症を引き起こす恐れもあるのです。

もしかしたらジンベエザメたちはダイバーがカイアシの除去をしてくれる度に「なんだか泳ぎにキレが出てきたなぁ〜」とか思っていたのかもしれません。

ミーカン氏自身はこう解釈しています。

「ジンベエザメには普通、コバンザメのような小型の魚類が寄ってきて皮膚の寄生生物を食べていってくれます。

彼らはおそらく私たちを見て、”今まで見た中で一番大きなクリーナーフィッシュ(掃除魚)が来たな”くらいに思っているのでしょう」

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のんびりマイペースに泳いでいるだけに見えるジンベエザメですが、実際にはちゃんと周りを見て自分に有益なものには泳ぎを合わせてくれる高い知性があるようです。

テレビなどで大きな魚と掃除魚が連れ添って泳ぐ姿を見て、ああした共生関係がどうやって生まれるのか不思議に思っていた人もいるでしょう。

しかし、ジンベエザメが研究者の数年の採集活動でも協力的になってくれるところを見ると、そんな関係は案外簡単に生まれるのかもしれません。

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参考文献

Whale sharks found to slow down to allow researchers to scrape off parasites
https://phys.org/news/2023-05-whale-sharks-parasites.html

Ningaloo whale sharks found to stop swimming to have parasites plucked by researchers
https://www.abc.net.au/news/2023-05-16/ningaloo-whale-sharks-will-stop-to-have-parasites-plucked/102348656