さらに近年では、皮膚に付着するカイアシ類を分析することで、詳しい食事データが得られることが分かってきました。
カイアシ類は小型の甲殻類で、世界に約1万5000種が知られており、その約35%は寄生および共生種となっています。
そこでチームはカイアシ類を集中的に採取するようになりましたが、6年間の調査で明らかになったのは、食習慣よりもむしろジンベエザメの意外な性質でした。
採取の間、泳ぎをやめて止まってくれるように
研究者たちは定期的に、ジンベエザメの口元やヒレに寄生したカイアシ類をプラスチック製のナイフを使って、こそげ取るように採取していました。
ところが研究主任のマーク・ミーカン(Mark Meekan)氏によると、最初の頃はその作業も一筋縄ではいかなかったといいます。
「水中ではゆっくり泳いでいるように見えますが、ジンベエザメに追いつくのは大変なことで、ましてや頭まで近づいて息を止めながらカイアシ類の採集をするのは極めて困難でした」と話しています。
ジンベエザメの方も、ダイバーがカイアシの除去に来たからといって、立ち止まってくれることはなかったそうです。
ところが変化は最近になって表れ始めました。
なんとダイバーがいつものようにプラスチック製ナイフを持って近づくと、ジンベエザメたちが泳ぎをゆっくりにしてくれたり、完全に止まってくれるようになったのです。

もちろん、すべての個体がそうなった訳ではありません。
しかし「何匹かのジンベエザメは私たちが近づくと明らかにスピードを落とし、サンプル採取に協力的になって作業をやりやすくしてくれました」とミーカン氏は話します。
作業が終わると、ジンベエザメはまた元のスピードでその場を後にしました。