ジンベエザメは研究者のやりたいことを理解して、協力的になれるようです。

西オーストラリア大学(UWA)の海洋生物学者らは過去6年にわたり、同国沿岸に暮らすジンベエザメ72匹の皮膚から寄生生物を採取する調査を続けてきました。

その結果、ダイバーがお馴染みの採取器具を持って近づくだけで、ジンベエザメたちは泳ぐスピードを遅くしたり、完全に止まってくれるようになったのです。

寄生生物の除去はジンベエザメにとっても有益なので、研究者は「彼らが私たちをデカい掃除魚だと思っているのでしょう」と話す。

研究の詳細は、2023年5月14日付で科学雑誌『Fishes』に掲載されています。

目次

  • 6年にわたりジンベエザメの皮膚サンプルを採取し続けた結果

6年にわたりジンベエザメの皮膚サンプルを採取し続けた結果

ジンベエザメは現存する魚類の中で最も大きな生き物です。

サメとは言うものの、ホオジロザメのような凶暴な歯はすでに退化しており、プランクトンを吸い込んで食べる濾過摂食となっています。

なので人を襲うこともありません。(ただし巨体ゆえに接触すると危険です)

一方でジンベエザメの生態に関しては、いつどこで繁殖し、何をどれくらい食べているかなど、未解明な点が多いのも事実です。

そこでUWAの海洋生物学者たちは過去6年にわたり、オーストラリア西海岸のサンゴ礁帯であるニンガルー・リーフ周辺に生息するジンベエザメ72匹の追跡調査を行ってきました。

当初の目的は、ジンベエザメの皮膚や寄生生物を採取し、そこに含まれる化学物質を調べることで、何を食べているかを間接的に明らかにすることでした。

というのも、ジンベエザメは夜間や深海で餌を食べるため、食事シーンを直接観察することが難しいからです。

ジンベエザメから採取した皮膚や寄生生物のサンプル
ジンベエザメから採取した皮膚や寄生生物のサンプル / Credit: UWA – Tiny parasites store ‘black box’ of information on whale sharks’ diet(2023)