そしてこの実験で得られた多細胞酵母には「スノーフレーク酵母」との名前がつけられました。
同様の人工進化は多くの研究で成功しており、地球に現存する酵母や藻類を多細胞化すること自体は比較的容易であることが判明します。
しかし既存の研究によって多細胞化した生物はどれも細胞数が数十個から数百個と極めて微小なものです。
一方、現存する多細胞生物を構成する細胞数は線虫のような小さな動物でも1031個、マウスでは300億個、人間では60兆個にも及び、大きなギャップとなっていました。
そこで今回ジョージア工科大学の研究者たちは2015年に作成されたスノーフレーク酵母を培養し、少しでも大きな塊を回収する選別を3000世代に渡って繰り返しました。

すると、上の図のように、100個ほどの細胞の寄せ集めに過ぎなかったスノーフレーク酵母は多細胞化を推し進め、最終的に大きさが最初の2万倍(直径1㎜)、体の物理的な強度も1万倍に増強していたことが判明します。
直径1ミリといえば小型のハエとして知られるショウジョウバエに匹敵するサイズです。
また1万倍に増加した物理的強度は木材に匹敵する値となりました。
この結果は、元は単細胞生物である酵母も人工進化によって、目に見えるサイズ(巨視的サイズ)に進化させられることを示します。
そうなると気になるのが、酵母たちに何が起きたかです。
巨視的サイズに進化した酵母たちの細胞は、どんな変容を起こしていたのでしょうか?
細胞が細長く伸びて互いにツタのように絡まっている
